私が思う、日本の誇るフリーソフトは3つある。
Susie、LZH、最後はフリーソフトとは異なるが、統合アーカイバプロジェクトである。
・・・紹介しておいてなんなんだが、下手をすると今や知られていないものばかりだ。
ではまずは知名度が一番“マシ”であると思われる「LZH」に関して。
LZH
LZH、これは圧縮形式のひとつで、「吉崎栄泰氏が開発した国産の圧縮形式」とはもはや枕詞化している。参考→http://e-words.jp/w/LZH.html
そのころはまだDos画面で解凍するようなスタイルではなかったかと思うが、そんな時代のものが未だに現役であることに驚愕する。はっきり言ってこのソフトくらいではないのか。
このLZH、普及しているのは国内のみである。世界的にはまったくと言っていいほど通用していない(今まで様々DLしてきたが海外サイトでお目にかかったことは一度もない)。
世界的には(少なくともWindows&英語圏では)ZIPが主流なようで、そのあおりを受けて国内でもZIPに道を譲っている感はある。それを後押しした遠因の一つはWindowsXPに搭載された「圧縮フォルダ」で、1%くらいは影響度があるはずだ。あれのおかげでアーカイブソフトをインストールすることなくZIPファイルが解凍できるようになった。
だが、そんなご時世でありながらMicrosoftさえも、LZHには敬意を表した。圧縮フォルダとしてLZHを使用可能にしたのである。
http://support.microsoft.com/kb/896133/ja
これが露骨に日本向けであることは、英語版のナレッジベースが用意されていないことからもわかる。日本の一介の圧縮解凍形式は、天下のMicrosoftを動かすほどであったのである。
統合アーカイバプロジェクト
同様に、アーカイバに関するものとして統合アーカイバプロジェクトを紹介したい。
よくアーカイバソフトをダウンロードするとまれに、「圧縮/解凍のためのDLLは別途ダウンロードしてください」といわれることがある。インターネットに接続していない環境だったりダイヤルアップの時はこれが非常にムカついたものだが、この、「圧縮解凍DLL」と「アーカイブソフト」の分離こそがこのプロジェクトの目的としたことである。
このアーカイバプロジェクトは、アーカイブを扱うためのDLLを統一したAPIで扱えるようにすることを目的としている。このおかげでソフトウェア開発者は圧縮・解凍に開発工数を割くことなく、UIの開発に専念することができる。(参考:通信用語の基礎知識 - 統合アーカイバプロジェクト
そのため、日本のアーカイブソフトの多くは、適当に作ったソフトでも無駄に多くの形式に対応させることが可能になった。ZIP、LZHは言うにあたわず、RAR、TAR、ARJ、GZなど、およそ普段手に入らないような圧縮形式にまで対応することができたのである。これはひとえにこのプロジェクトのおかげである。
そうして私はもう一点良いところを挙げたい。このおかげで、多種多様なアーカイバが生まれたことである。
中にはジョークソフトのようなものから中途半端なものまで種々あるが、そういった中でフリーソフトの数が徐々に増え、現在のようなフリーソフトを自由に使える下地ができたのではないかと考えている。
Susie
統合アーカイバプロジェクトは、たくさんの形式を統一した形式で扱おうとしたプロジェクトであった。私はこういう「共通インターフェース」を用いることで様々な形式がひとつのソフトウェアで扱える、というのが好きなのかも知れない。このSusieもそういったソフトウェアで、これは画像ファイルを扱うためのソフトである。
画像閲覧ソフトなどでは「別途Susieプラグインを用意してください」などと求められることがある。このSusieプラグインこそは、世の種々の画像を扱うための統一されたDLL群なのである。
JPEG、PNG、BMPなど、プログラム開発にあたって利用するには一癖あった様々な形式だが、このSusieプラグインを利用することにより、一手に扱うことができるようになった。
特徴的なのはそれだけにとどまらなかったことである。
一部で代表的な使われ方をしたのは、PCゲームの画像を吸い出すためであった。通常、ゲーム画像などは個別に格納されておらず、まとめられていることが多かった。あるいは悪用を防ぐため、ヘッダを書き換えるなどして別の形式と認識させていることが多かった。
これを、DLLを用いてJPEG等認識可能な画像として読み込むことで、Susieプラグインに対応したソフトで読み出すことを可能にしたのである。さらに、暗号化された画像を読み出したり、圧縮ファイルの中か空直接読み出したり、フォトショップのレイヤーを読み込んだり、PDFを読み込んだり、と、本当に様々なプラグインが開発された。
そんな様々な妙な形式を、その形式に対応したSusieプラグインと、Susieプラグインに対応したソフトウェアがあればシームレスに、ファイル形式を気にすることなく読み込むことができたのである。
そしてこれは日本の一人の開発者の手によって作り上げられた。これは、日本が誇るべき技術であろう。
かつて、日本にはこのような、国内みなが知っているような技術やソフトがあった。いわゆる「国民的フリーソフト」とでもいうようなものである。
今やフリーソフト春秋戦国時代。フリーソフトが現れては消え、また新しいフリーソフトが生まれる。
そんな中で、生き残ってきたソフトウェアたち。
古くさい、と思いつつも、それだけ長い間指示されてきた理由があるのだと思うと、感慨深い。