その1:
http://straycat.s101.xrea.com/blog/diary.cgi?no=19
その2:
http://straycat.s101.xrea.com/blog/diary.cgi?no=22
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――かつて、それは水のように透き通っていた。
最初は小さな小さな球体。
小さいけれどもしかし、はち切れそうにたくさんのものが、その中に詰まっていた。
可能性。
人はそれをそう呼ぶ。
ひとつひとつは本当に小さかったかもしれないけれど、大人たちから見ると、それは本当にまぶしいほどに光り輝いていた。
それらはやがて形作られることを夢見る、無限の可能性を持つ球体だった。
それは水の星・地球のように、どこまでも青く、未来そのものだった。
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オトナになると、輝きはだんだん失われていく。
「正義の味方には、なれなかった。」
「歌手には、なれそうもない。」
「頭が悪いから、医者は無理だな。」
「海外で暮らしたかったなぁ。」
「あのとき、こうしていれば。」
ひとつ、またひとつと可能性は輝きを失っていった。
幼い頃のいくつもの夢が泥に沈み、夢見た未来がまたひとつ黒く塗りつぶされた。
そうして、年経るごとに球体は黒く暗く昏くなり、膨らんだ希望に裏切られた分だけ膨張していった。
どぷん。
青い星はいつしか泥に沈み、なお黒い汚泥を生み出した。ごぽごぽと止めどなく溢れ出すそれに辺り一面が染まる。もとは球体だったものは、内から溢れ出すそれに沈殿し、いつしかどこにあるやらわからなくなってしまった。
「・・・これが、俺の『未来』。」
黒い泥の海を見下ろしながら、絞り出すように呻いた。
きらきらと輝いていたはずの未来は、諦観、失望、無念、嫉妬、後悔、逃避、それらにがんじがらめにされておぞましいほどに変わり果てていた。