どろり、
と黒い粘液質の塊が流れ出る。
汚い、と思う一方、出さなければこんなものが体の中にたまっていたのだと思うと、ぞっとする。
一度では飽き足らず、どぷん、どぷんと溢れ出す。
それはココロの器。
気づかぬうちに、器にはゴミがたまり、見て見ぬふりをするうちに
いつのまにかヘドロになり、やがてそれはこうして怨念の塊にも似た、黒い塊となって溢れ出す。
私はそれを絞り出す。
こぶしを握り締め、カラダ全身を使い、最後の一滴に至るまで絞り出す。
そうして必死になって絞り出したそれは、何かを形作るではなく。
ただ重力のままに流れて溜まっていた。
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「ちょっとは落ち着いた?」
戻ると瑞樹は笑っていた。
瑞樹は私がこうして席を外した時は、いつも笑って待ってくれていた。
顔を見ればわかるのかもしれない。瑞樹はもう知っているのだ。私がまた戻ってくるときには、また私が自分を取り戻していることを。
「うん。ありがと」
私はためらいがちにお礼を伝えながら、カフェの椅子に再び座った。
座りなおして顔を上げると、瑞樹と目があった。瑞樹が少し首をかしげる。それがかわいらしくて、私はなんてことのないそんな仕草に、また笑ってしまうのだった。
「ようやく笑ってくれた。」
瑞樹が言う。瑞樹の声は低くて、安心する。なぜ男の人の声の低い声は安心するのだろう。
そんなことを思いながら、また瑞樹の顔を見た。
私は、瑞樹のことが、好きだ。