カバンからモバイル端末を取り出す。
これを忘れると大変なことになる。これを忘れて『ゲート』を不意にくぐってしまうと、元の世界に戻ることは絶望的になる。
『ゲート』は常に一対で現れた。たとえば、西暦2100年と2000年をつなぐゲートがある場所に現れたとすると、同時にどこかでは西暦2000年と2100年をつなぐゲートが現れる。この辺は世界が安定であるための必須条件らしいのだが、そのあたりは私にはよくわからない。
私が今することはその理論を学習することでなく、元の時間に戻るためのゲートを探すことだ。
端末は元居た時間につながっている。これは同時にこの世界のどこかに元の世界につながっているゲートが存在していることを示す。そのわずかな繋がりから情報を拾ってきてこの端末はその繋がっている場所を示してくれる。『時空の神隠し』以降、こういった事故を防ぐための必須アイテムとなってしまったもののひとつだ。
「えーと…。」
マップに表示させる。ここから…、6駅先の近くにある民家のようだった。
「げ、民家…。」
最悪だ。しかし一番近いのはそこだったし、ゲートの気が変わらないうちにさっさとくぐらなくては。
私はちょうど青になった交差点の信号を見やりながら、駅へと急ぎ足で向かった。
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