『ゲート』と、今の人は単に呼んでいる。
それは時間の歪みを持つ、特異点。
そのゲートを境にして、時間は非連続につながっている。
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今から15年ほど前、これら時間旅行する技術が確立された。
もともとは学術の研究向けの技術で、過去の歴史や史実をこの目で確かめたいという夢と時間旅行をいつかこの手でとの夢が合致した結果、生み出された。
生み出された、と言っても、多くの科学技術がそうであったように、半分以上偶然の産物だった。
膨大なエネルギーを閉空間に閉じ込めそれを十分小さなゲートに向けて一気に開放することで一時的に時空を歪ませる、という体当たりな技術ではあったが、この方法により時間軸を歪ませ、対象物を別の時間へ送ることが可能になった。
この時間旅行が可能になったという壮大なストーリーは、いまや全世界の小学校の教科書に載せられていると思われるほどの、人類の偉大なサクセスストーリーとして語り継がれる事になる。コンピュータ以来の発明だとされた。
だが、人類が時間を自由に操るにはまだ時間が早かったと、歴史家は見ている。
それが今回の事件につながる。全世界、この時空のありとあらゆる場所で大発生した『時空の神隠し』である。
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